次世代ゲーミング-業界の展望 – Unreal Engine

次世代ゲーミング-業界の展望 – Unreal Engine

※ Fortin 氏は Ubisoft の Assassin’s Creed Origins と Odyssey を現世代での例として挙げています。

Ubisoft もまた近年のツールセットとグラフィック忠実性の向上が現世代のゲームに影響を与えたと考えています。Ubisoft のケベックシティ オフィスで Scimitar/Anvil パイプラインのリードアーキテクトをしている Pierre Fortin 氏はこのように述べています。「この世代のゲームはサイズ面で大きくなりました。クリエイターはより大きく、よりリアルな世界を作ることが可能になりました。グラフィック忠実性が劇的に向上し、業界のアーティストもグラフィック プログラマーのスキルが試されることになりました。物理ベースのレンダリングや詳細なグローバル イルミネーションは、近年、すべてではないとしても多くの AAA 大作ゲームで取り入れられるようになりました。」

ただ、Fortin 氏は、こうした消費者に見える進歩もある一方で、デベロッパー側の世界を制作する方法においてさらに大幅な進歩があったと補足します。「この10年間でゲームの制作方法が劇的に変化しました。私が目にした大きなイノベーションのいくつかは、クリエイターが大きなゲームを作ることを可能にするような舞台裏に存在するようなものでした。制作パイプラインにおけるプロシージャル生成の登場と、AI の使用の増加により、より賢く仕事ができるようになりました。量を目指すのではなく、質の向上に注力できるのです。これが直接、制作物の質の向上に繋がります。テクスチャの生成、フェイシャル アニメーションの合成、最適化オブジェクトの生成(LOD)から世界の生成まで、コンテンツ合成の自動化は、これまでの流れをまったく変えてしまうものでした。」

課題

ゲームエンジンの普及、グラフィック処理能力の拡大、イテレーション速度のこれまでにないほどの向上といった進歩が現世代でありました。こうした進歩が今現在のゲームを形作る助けになった一方で、思い描くものをコードに実装する際に直面する制限も、今のゲームを作り上げる要因になっています。

Ubisoft の Fortin 氏は、現在のツールと技術は限界に到達し、「押し付けられるデータの量の圧力から亀裂が生まれている」と述べています。 ゲームの世界は、さらに複雑に、リアルに、有機的なものになり、そうした世界で移動しインタラクションを行うためにキャラクターをアニメーションさせるシステムも複雑化しています。そうしたものを機能させるために用意する必要がある手動で用意するデータ量が増えてきて、維持するのが難しいところまで来ていると Fortin 氏は考えています。

「世界は非常に広大になり、その中での詳細描写も向上し続けています。Assassin’s Creed ブランドでは、かつては世界のすべてを手動で作り上げていました。細心の注意を払ってプロップ、建物、特徴的な地形などを配置していました。今では、人間が制御するプロシージャル生成で、同様の結果を生み出しています。これによって世界のサイズを大幅に拡大することができました。チームは量より質に注力することができるようになりました。しかしながら、このプロシージャル生成の結果は静的で完全に最適化された世界です。実行時にできる変更は限られてしまいます。こうしたデータを現世代のコンソールハードウェアで再生成することは現実的ではありません。そのため世界への物理的変更、例えば、新しい都市の追加や地形の変更など、について制限があります。」

容量とDLCのデータ更新の問題

現世代の大作 AAA タイトルでは、規模や複雑性が増大しただけではなく、そのライフスパンが伸びました。このことが、事態を悪化させるわけではないですが複雑にしています。Assassin’s Creed のような大作は、かつては一度素晴らしいシングルプレイヤーを遊んだら終わるものと考えられていました。今では、リリース時の物語、ゲームプレイからさらに発展していくという期待が膨らんでいます。そして最も基礎的な問題に直面します。容量です。

Fortin 氏は述べています。「よく見逃してしまう技術的問題としては、パッケージングや、ゲームの更新やパッチの配置があります。Assassin’s Creed Odyssey のような作品では、Blu-ray ディスクの容量全体を使い、実行時のアセットストリーミングのパフォーマンスを最大化しています。この実現のために、従来のハードディスクでのシーク時間を最適化するような方法で、データを切り刻みマージする複雑なポストプロセスをビルドのパッケージプロセスで行っています。そのため、更新で一つのアセットファイルやプロパティを置き換えるのも単純ではなく、ベイク済みの世界で依存関係を多く持つ大きいデータの塊を置き換えるのはさらに困難です。Assassin’s Creed Odysseyでは、ディスクの製造後に制作され、定期的にリリースされるコンテンツで満載のローンチ後の長い計画がありました。この計画と、プレイヤーにとって楽になる最小の更新サイズを実現したいという強い気持ちの両方によって複雑な状況になります。実現できるローンチ以降のコンテンツへの取り組みには成功しましたが、それでも制限はありました。」

技術は進歩しますが、ある意味その進歩によって、デベロッパーはバランスに関する大きな制限に直面することになる、と Urquhart 氏は考えています。「時間、リソース、忠実性です。現在のハードウェアでもエンジンでもあまりに多くのことが可能です。どこで戦うかを選ばなければなりません。972 個のマテリアルを持つ世界でこれまでみたことのないほどの美しいポリゴンをレンダリングして、完璧な壁で、光を屈折して、完璧な影があったとしても、それだけでは世界にはならない、と思いませんか?なので私達はいつも考えています。あれはどう最適化しよう?このプレイヤー体験をどう最適化しよう?忠実性とフレームレートのバランスの問題で、ここに壁があります。」

Urquhart 氏はこれを「科学者 vs エンジニア」の問題とも表現しています。科学者は素晴らしいものを発明しますが、実装のコストについては考えないことがあります。そして、エンジニアは、現実世界に現実的なコストで実現する方法を考える必要があるのです。

「様々な最先端の技術にアクセスはできます。ただ、複雑になった技術を実際にゲームで実行できるようにするにはどうしたらよいのでしょうか?ゲームがリアルになるにつれて、技術についての2つの壁に直面するのです。」

制限

Gearbox の Pitchford 氏は、技術的制限は常に存在し、それがイノベーション発生を刺激する強力なツールになると述べています。「Half-Life のセガ ドリームキャストへの移植を助けた時のことを覚えています。ドリームキャストの VMU(セーブデータを保存するデバイス)のメモリ合計が 128K で、この容量を他のゲームも使うというところに課題がありました。その一方で、Half-Life のセーブデータは平均して約 2MB でした。締め切りは近づき、エンジンのセーブシステムを最適化するといった通常のアプローチは、この課題を発見してから解決までに残された限られた日数を考えると困難でした。」

「ここでの解決策はテクニカル ディレクターが思いついたもので、辞書のようなアプローチになりました。ゲームは光学ディスクに収録され、膨大な余りスペースが存在していました。この余りスペースに起こる可能性があるセーブデータファイルを保存し、ファイルの指定情報とごく僅かな差分だけを VMU に保存することにしました。これで 2MB のセーブデータになるはずのものが、数十KB に圧縮できたのです。」

Pitchfork 氏は有名な作曲家のレオナード・バーンスタイン氏を引用しました。「偉大なことを実現するには2つのものが必要になる。計画と、不十分な時間だ。」

Ubisoft の Fortin 氏も制限を同じようなものだとみなしています。イノベーションを生み出す機会の一つだと考えています。「Ubisoft でも業界全体でも、仲間たちが生み出す賢いイノベーションや最適化にいつも驚かされています。」

機械学習(AI)の未来

ゲームがさらに大規模で複雑で長い間遊ばれるもになるということは明らかです。ゲームデベロッパーにとって直近の問題として、生成し組み合わせ処理するデータ量それ自体が膨大になるということがあります。

Fortin 氏は機械学習と人工知能の大幅な技術進歩が将来のゲーム開発での重労働の一部を肩代わりするということを期待しています。

「最近見かけた中で最も期待できるプロトタイプのいくつかは、機械学習を使い、素晴らしい品質でデータを合成していました。プロシージャル生成から自然と発展するトレンドのように思います。従来のアニメーション作業がなくなるということは当面ありませんが、間を埋めるアニメーションの生成など退屈なアニメーション作業については、近未来に機械学習アルゴリズムが対応する仕事になるでしょう。そうすればアニメーターは人間の判断が必要となる、重要な部分に注力できるようになります。これは、AI が補助する人間手動のプロシージャル データ生成、と私が呼ぶようなものの一例に過ぎません。」

彼はまた、機械学習はゲームバランス調整、チート検出、ゲームのテストの自動化、ランタイムのゲーム AI といったものまで様々な領域で役割を果たすようになると考えています。

「機械学習は、制作段階でも、実際のゲーム実行の段階でも多くの可能性があります。もちろんすべての問題を解決する銀の弾丸ではありません。それでも、大いに投資する価値がある領域と思います。」

業界はフォトリアルなゲームでの不気味の谷を急速に乗り越えようとしていますが、その一方でグラフィック品質と、アニメーションや AI の品質といったものの間のギャップが広がる可能性が高くなります。それがまた別の種類の不気味の谷になります。

「グラフィックが素晴らしくフォトリアルでも、NPC キャラクタがロボットのように振る舞っているのが見えたら、リアルであるという幻想は破壊されてしまいます。」

より簡単に

Cammarata 氏は次世代のゲーム制作ツールはさらに簡単に使えるようになることを願っています。ゲーム制作のプロセスが謎ではなくなり、ゲームを作ろうと興味を持ち、実際に作成する人が増えることになります。

「ゲーム制作という障壁を超える人が増えれば、様々なユニークな視点から、文化的に多様なコンテンツが実現するでしょう。私は新しく変わったコンセプトのゲームを見てみたいです。ヒンズー神話のゲームや、オーストラリアの原野とドリームタイムについてのゲームや、熱湯が噴出する深海に生きるバクテリアについてのゲームなど…この惑星に生きている、今までゲームデザイナーではなかったとしてもクリエイティブな人間による、想像を超えた面白いゲームを見たいのです。」

ライブラリ

Urquhart 氏はエンジンの基礎的な改善には大きな利点があると指摘します。新しいデベロッパーも既存のデベロッパーも、「車輪の再発明」に費やす時間が減るからです。

「この話は馬鹿げて聞こえると思います。ですが、毎回、人間キャラが椅子にどのように座るのかを作り直さなければいけません。他のことに注力できていません。デベロッパーが RPG を作るとします。ほとんどのゲームにはインベントリシステムがあり、皆が新しいインベントリシステムと UI を作っています。ドアだってそうです。ドアを作り直すのですww。どうして馬が登場するゲームは限られているか知っていますか?馬は非常に複雑で困難です。うまく作ったとしても、ぎこちないものになります。つまり、毎回新作の開発を始めるときには『馬を出すの?』といった会話になります。これは、とても、地味な技術だとは思います。それでも、こうしたものの下地があれば、デベロッパーは得意とする部分により注力できるはずです。」

Riot の Street 氏は、これを岩問題と呼んでいます。

「デベロッパーは毎回時間をお金をかけてゲームのアセットを生成します。毎回作り直す必要のないものもです。オープンワールドゲームはすべて、草と岩と木を必要とします。同一の標準化された岩アセットをすべてのゲームで見るのは嫌ですが、それでも、毎回『何個の岩が必要になる?』という話をするのは不必要と思います。

Street 氏は会社がほぼ同じツールを再開発するのに時間を使っていることを指摘します。アカウント接続、ソーシャル機能、プレイヤー行動トラッキングについて、より専門的で改善されたベースとなるツールが出てくることが望まれています。

Street 氏は「こうした機能がサポートがよい商用ツールで存在したら素晴らしいでしょう。」と述べています。

2D アニメーション、AI 補助による制作の効率化やコンソール電力消費の削減、など様々な改善についても期待されています。

ゲーム ロジック

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